仲間達と一緒に、コランダム達は森へと歩を進める。
さらに深くなっている森の前で足を止め、この森を今日の探索地点と定めた。
自分達の他にも数名この地点にたどり着いたものが居たようで、普段はとても静かであろう森は、18名…もしかすると、まだもう少し居るかもしれないが、それなりの人数を受け入れ、多少にぎやかになっている。
今日は仰木雄介とは別のパーティだ。彼はフォンデュ=ブルギニョンヌと共に居る。
それぞれが探索場所を求め、散り散りになると、主人と別れたヤリは、寂しげにしていた。
お別れの際には、べそをかいていた程だ。
そして、寂しいだけではなく、とても心配そうにしていた。彼女は元々、森に来ることを心配していた。
「大丈夫なんですかね、やりませんは心配です。」
「毒蛇のことかね?」
「いえ…森にはいること自体が…ウサギさん、黒玉ちゃん逃げられないようにしてくださいね…っ」
来る前にコランダムが交わした、ヤリとの会話。
今思えば、彼女はとても賢明だった。ブラック・オニキスが未だコランダムに懐かぬ今、ここに来るのは早すぎたのかもしれない。
ヤリの心配は的中する。
皆の姿が木陰に隠れ見えなくなり、自分達の探索場所を定めた時、木のむこうに大きな影がゆっくりと、ゆっくりと、這っていくのが見えた。
あまりの大きさに目を見張る。表面をぬらぬらとした粘液で纏った、まだら模様の、土の色をした蛞蝓。
目が合う前に、三人は大慌てで木陰へと滑り込んだ。
なんだ、あれは。
「ウサギさん…なんでしょうか、あれ…毒蛇でも、虎でもない…」
「シッ。…もしかしたら、まだ見つかっていないかもしれない…。」
十分、いや、二十分…暫くそこに隠れ続けた。
時の流れが異常に遅く感じられる。息を潜め、危険が去ってくれるのを祈るしかなかった。
多分、我々にこの敵は、早すぎる―…
「ジジッ…」
ブラック・オニキスが発する警戒音。我々の背には、大きな二つの目があった。
逃げられない。